【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
「あぁん、もぅ! どうして……私では駄目なのですか!?」

 ケイティはなんとかそれをかいくぐろうと頑張ったが……小公爵の防御は固く、ことごとく跳ね除けられ、そして彼はパメラの膝の上ですくっと立つと飛び降り、すたすた歩いてゆく。

「なぁんでぇ……私だけどうして!?」

 がっくりと肩を落とし涙目になるケイティを残し、扉の前でニャオンと鳴く小公爵。

「あら、こちらの視察はもうお済みですのね。ではお気を付け下さいまし……」

 パメラがそっと扉を開けてやると、まるで挨拶するかのようにもう一鳴きし、小公爵は体を揺らして出て行く。

 扉の隙間から顔を出してそれを見送るリュミエール達。

「残念だったわね、ケイティ……」
「う~、肉球しか触れませんでした。今度また餌付けでもして見ようかしら」
「小公爵は誇り高き貴族家の猫ですから、専用のお皿に盛りつけた食事しか食べませんの。賄賂は受け取らないきっちりとした御方ですのよ」
「まぁ素晴らしい……。ん~、じゃあ今度は、お手紙でも贈る所から始めてみましょうかね!」
「うふふ、それはやりすぎよ……!」

 三人はそんな会話で楽しく笑いながら、扉の隙間から可愛いお尻がゆらゆら揺れて曲がり角を消えてゆくのを名残惜しそうに見送るのだった。

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