【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
「聞こえていないのかしら? では顔を洗ってあげましょうか、そうすれば頭もはっきりするはずよ。水よ、我が求めに応じ……彼のものを(ひた)せ!」
 
 ――聖女としての力。
 突き出した腕の先から一抱えの水球が生まれ、それがリュミエールの顔へぶつかってくる。バチャッと弾けた水を被り、彼女は濡れ(ねずみ)の様に体を震わせた。

(ひどい……どうしてここまで)

 彼女は、こんなみっともない自分を見られたく無くて顔を覆う。
 今すぐこの場から立ち去りたいと思うけれど、足に力が入らなくて立ち上がることすらできない。

 冷たい水が体温を奪い、リュミエールは青ざめたが……悲しくも彼女の味方は誰もここにはいなかった……。

(このまま死んでしまえたらいいのに……)

 絶望に心が塗り潰されたリュミエールは意識が保てずにそのまま倒れ込む。
 そんな折だった……。

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