【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 王太子の顔にさっと朱が昇るが、公爵の冷たい声音は続く。

「その娘が何をしたのかは知りませんが、公衆の面前でされることでもありますまい。もしなにか法に(もと)る悪行でも犯したのでしたら、裁判にて真偽を明らかにすべきでしょう」
「……む」
「そ、その娘は、この国の宝である王太子殿下の心を傷つけたのですよ! 糾弾されて当然では……」
「黙れ……」

 公爵の、極北の冷気をはらんだような眼差しが、サンドラの口を縛り付ける。

「私は殿下とお話ししているのだ。寝取(ねと)()如きが口を挟むな」
「……っ」

 サンドラは真っ赤になって口をつぐみ、王太子を見上げた。
 そして、王太子の憎しみの宿した瞳が、公爵の冷めた視線とぶつかる。
 
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