【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 劇場や博物館では、すぐに涙腺が緩くなるリュミエールの涙をレクシオールがハンカチで拭ってやったり……昼食の席で苦手なキノコを男の意地で飲み込み、目を白黒させるレクシオールをリュミエールが応援したり……道中、二人から明るい表情が絶えることはなく、ここに来る前の彼女を知っているものならば、別人だと見まがう程だった……。

 そんな風にして最後に二人は、河にかかる一つの橋を訪れる。
 楽しい時は終わりを告げ、水面の向こうでもう日が沈んでゆく。

 二人で並んで夕日を見ながら、風に身を任せた。

「私、今までで今日が一番嬉しくて、一番楽しい一日でした……」
「……そうか。俺はお前の世話ばかりで忙しかったがな」
「うぅ……すみません」

 恥ずかしくなってうつむくリュミエールを、レクシオールの手が撫でた。

「……冗談だ。俺も本当に楽しかった……子供の頃に戻ったような気分でいられたよ」

 レクシオールは欄干に肘を掛け、瞳を遠くにやる。

< 222 / 341 >

この作品をシェア

pagetop