【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
「俺は、昔……弟か妹が欲しくてな。酷く駄々をこねて母を困らせたことがあった。その頃にはもう母は体を悪くして臥せっていたし、父も父で、母一筋であまり余所に女を作りたがらなかったから、どうしようも無かったのに……。今思うと酷いことをしてしまったな」
「……それは仕方ないです」

 私には兄弟や家族はいるのに、分かり合えない……彼はとても家族を大切に思っているのに、失くしてしまった――そんな真反対の二人なのに、どうしてこんなにも彼の気持ちが分かるような気がするのか……リュミエールは不思議だった。

「すまん……お前は家族と折り合いが悪いんだったな。だが今日は少しだけ……もし兄弟が、家族がいたらこんな気分なのかも知れないなんてことを思ったんだ……」
「……私は妹じゃありませんよ?」

 彼の怒った顔を今日はほとんど見なかったから気が抜けていたのか、ついリュミエールは自分でも思ってもみない言葉が口から出て驚く。

 それでもじっとレクシオールを見つめ続けると、レクシオールも素直にそれを認めた。

「そうだな……うん。エル……やっぱり俺は、お前がいいな」

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