【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 間近で見る彼は努力の人で、何かに急き立てられるように上を目指していた。
 何の不自由もなく暮らしていける家柄の彼がなぜそのようにするのか、その事情が母親のことが原因だと彼の口から聞くまで二年ほどかかった。

 そんなレクシオールを敵視するものも多く、家柄のせいで真正面で反抗できないからか、目に見えないところでの陰湿な苛めも多かった……。
彼と協力し主犯格の少年を捕らえて、さんざに脅しかけ、目が遭うだけでその場から逃げ出す位にしてやったのは、今ではいい思い出だ。

 三年の時はあっと言う間に過ぎ、レクシオールが主席という華々しい経歴で卒業した時……フレデリクはほとんど見たことの無かった彼の満面の笑顔を見て、何らかの目標を達成できたのだと祝福し見送った……。

 しかし、その数か月後彼の元を訪ねた時、その瞳は見る影もなく曇っていた。

 大事な家族を相次いで失くしたと聞いた……それからが大変だった。
 中々立ち直ろうとしない彼をなだめ、焚き付け、彼を心配する家人たちと共に、必死に彼を説得した。ハーケンブルグの領地を引き継ぐ者は君しかいない、それができなければ多くの人が不幸になると言って。
彼がそれを無視できる程自分勝手な男ではないと分かっていて、フレデリクや周りは残酷ともいえる道を彼に強いたのだ……。

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