【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
「では私も王太子殿下の御為、この無価値と断ざれた娘をこの場から取り除きましょう。先程窓から見ましたが、王家の紋章をあしらった馬車が見えた。このような三文芝居を陛下とお妃様のお二人が見られては、ここにいる皆がどのような不興を買うかわかりませぬゆえ」
「フン……好きにするが良い」

 王太子はキリと唇の端を()むと吐き捨てるように言い、サンドラも心細そうに彼の腕をにぎる。

 そして公爵はリュミエールを抱えて悠々と歩き出し……出際に一度だけ、先程語らっていた青年に目配せをしてその場を後にして行く。

 それが合図であったかのように、栗色の髪の美青年が陽気な声でグラスを掲げた。

「さあさ皆さま、今宵(こよい)はめでたき祝いの席であります……(いさか)いごとは好ましくありません! 陛下もじきにおいでになる様子ですし、王太子と新たな婚約者様の(まこと)の愛を皆でおおいに祝福させていただきましょう!」

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