【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
「――ルビディル、ルビディルはいるかっ!」

 王太子は自室を飛び出ると走り出し、国の重臣たちが集う大広間の扉を開け放つ。

「おお、カシウス様、もうお体はよろしいのですか?」
「ああ……なんともない。それより、やってもらいたいことがある。後で私の部屋に来てくれ」
(……良くない目だ)

 カシウスの瞳に狂気を見て取った宰相ルビディルは、周囲の動揺を収めた後、片眉を上げ大きくうなずく。

「……では、しばしお部屋でお待ち下され。会議が終わり次第、馳せ参じまする」
「必ずだぞ、いいな!」

 それだけ言って慌ただしく身を返す王太子は未だ気付いていなかった。
 その場に集まった臣下達の彼に対する視線が、すっかり冷め切っていたことに……。

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