【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
「ですが、それならば余計に先程の言葉は聞けませんな。正式な軍隊でも無いのに、罪人の引き渡しを願ってどうなるというのです。私刑にでも遭わそうとお考えですか?」
「罪人の処遇など、どうでも良かろう! そ、そ奴らを渡すのだ! 私は次期国王だぞ!」

 すると、他より一つ頭高い軍団長が、大音声で声を放った。

「全隊、気ーをつけぃ!!」

 鼓膜を直接叩くかのようなその声に、びしぃっ、と第二王子が連れて来た軍のみならず、王太子の部隊の方も背を伸ばす!

「罪人どもを護送しつつ、早々に撤収せよ! ここに参じたものの責任は問わぬ。ただし、この判断に背きこの場に残ったことが後日判明すれば、除隊のち牢獄送りは確実なものと思え! 貴様ら、いいんだなッ!?」

 王太子の後ろの自称貴族の子弟達はどよめき、「は、腹が痛くなりまして、王太子様、私はこれで」とか「実は実家の祖母の容体が思わしくなく……」とか言いながら次々と馬の首を返してゆく。

「お、おいお前ら、戻って来い! くそ、今度会ったらただでは置かんぞ! お~い! ……くっそぉ……」

 あっという間に王太子は一人になり、苛立たし気に地面に兜を投げ捨てた。

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