【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
「実は、一度だけあなたは御母上とご一緒に、こちらへ来たことがおありなのですよ。その時にも、全く同じお話をお聞かせしました。お母上は肖像画を見て、『この子が大きくなったら、もしかしたらここに来ることになるかも知れないわね』と、感慨深げにおっしゃっておりましたが……本当にその通りになりましたな……」
「まぁ……」

 そんな事実は初耳で、リュミエールはつい言葉に詰まった。
 亡き母は肖像画すら残っておらず……リュミエールは子供の頃、よくその姿を思って泣いていたのだ。

 実際に顔も見たことのない母が今、隣にいるような気がして不思議な気分になる中、シュミットル老人は二人に深く頭を下げた。

「お二人にお願いがございます。真昼が丘のある場所には、初代の聖女が眠っていると言われている石碑がございまして……その場所をお二人でお訪ねいただけませんか? きっと、あなた達のことをお待ちしているような気がしてならんのです……」

 老人の瞳は静かだったが、強い思いが宿っており……リュミエールは一も二も無くうなずくと、傍らのレクシオールを見上げる。

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