【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~

ハーケンブルグ公爵

 公爵が使っているという執務室の前に来た時、フレデリクは心配そうな顔でリュミエールを覗き込んだ。

「大丈夫ですか。手がずいぶんと冷たい……緊張されていますか?」
「ええ、少し」

 彼女は細い喉をごくりと鳴らす。
 冷血なる公爵と噂される銀竜公は、一体私をどのような態度でお迎えくださるのだろう……そんなことを考えつつ、リュミエールはすっかり心細くなってしまう。

 だが、ここまで来て戻る訳にもいかない。

 案内を任されたフレデリクも困ってしまうだろうし、もし世話係のケイティまでなんらかの(とが)めを受けてしまったら……その位なら恥をかいた方がよほどましである。

 そう思って、リュミエールは弱気を押し殺し、フレデリクに頷いた。

「心の準備は出来ました……」
「わかりました。では少しお待ちください。ハーケンブルグ公爵閣下、フィースバーク侯爵令嬢をお連れいたしました。扉を開けてもよろしいでしょうか?」
「……入れ」

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