【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 やや間があって、張りのあるバリトンが耳に届き、フレデリクは扉を開く。
 そして三人は入室し、執務室の机の前に立ったレクシオールの前に並ぶ。

(この方が、私をあの場から助け出してくれた方……)

 リュミエールの目は彼の姿に釘付けになった。
 背はフレデリクよりも更に頭半分ほど高く、すらりとした細身でありながら、しっかりと鍛えられているバランスの良い体格。その上に乗った顔は、精悍(せいかん)さを感じさせつつもおとがいは細く、一つ一つの部分が神秘的なバランスで整っている。

 そして何よりも印象的なのが、その長くきらめく銀の髪と、深い蒼の瞳である。
 間近で見ると、声も出なくなるような美しさであった。

 リュミエールは夢心地で公爵の姿を見つめていたが、それを現実に引き戻したのが、次の第一声である。

「――遅いッ!!」
(ひっ!!)

 思わずかがんで頭を押さえてしまう程の声の大きさ。
 ここまでの大声で怒られたのは人生初の彼女は、涙目で公爵を見上げる。

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