【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 そうして一心に演奏に没頭するリュミエールをじっと見つめる公爵。
 フレデリクは、壁にもたれ掛かりながらそれらを物珍しそうに眺めている。

(彼がこんなに女性に興味を持つのも珍しいことだ。いい傾向だな……)
 
 彼もレクシオールも今年で二十一だ。時間が許す限りレクシオールの結婚を待つ予定ではあったが、あまり適齢期を過ぎてしまうのも問題がある。こんなこともおそらく今年で最後にしなければならないだろう。

 彼がこうして頻繁にこちらに出入り出来ているのは、特殊な事情と打算ありきのことであったが、それ抜きにしてもフレデリクは友人としてレクシオールに幸せになってもらいたい。
 
 だから彼もこの心優しい聖女に期待していた……彼の心を解きほぐし、良き伴侶として支えになってくれることを。

(ハイネガー伯爵様、なかなかよろしい感じの御令嬢ではありませんか……?)
(君もそう思う? 僕も今回はきっとうまくいくと思うんだよね)

 ひそひそとフレデリクとパメラが囁き合うのにも気づかず、視線の先のリュミエールは演奏を終え、ゆっくりと弓を下ろした。

 ――パチ……パチ……パチ……。

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