【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 またこれか……。
 私が王太子のお守を任されるようになったのは、彼が十かそこらの頃だったと思う。

 すでにその高慢な人格は完成された後で……前任者はことごとく左遷や国外追放などを受け、優秀な人材の漏出を防ぐためにも、私が彼の面倒を見るほかなかった。おかげでこんな年になっても分別も付かず、政務で忙しい折にも何かあれば呼び出しが来るのはほとほと参っていた。

 とはいえ仮にも王太子、不興を買えば私もどのようなことになるかもわからない。国王は彼のことになると全く頼りにならない為……ある方と協力しつつ、おだて、なだめ、ひれ伏しながら何とかこれまで波風立たないように必死でやり過ごして来たのだ。

 だがしかし、なんと今回の相手は公爵相手――王族に次ぐ地位の高位貴族だという。王太子も数年後に即位式を迎えることになって、気が大きくなっているのかも知れない。

 ハーケンブルグ公爵は民や配下の信任も厚く、間違っても敵に回してはならない人物だ。

 しかしかといってこの王太子の怒りよう……断れば私の首が飛ぶことは間違いない。私は必死に頭を巡らせた……。

< 98 / 341 >

この作品をシェア

pagetop