麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その10
麻衣



おい、おい…、まったく面白いっての!

しかし、湯本先輩は意外と馬力あるな

今の3年が引退したら、この人、影響力持つかも…

さあ、ここで私が一番注目している人物、矢吹先輩の発言だ

空手3段、無口だけど半端ないケンカ屋なんだよな

荒子さんが総長となったら、矢吹先輩がどう出るかで、これからの南玉は決まる

この人がキーマンなんだ

この場の全員が、それに近い思いで、矢吹先輩の発言に注目してるはずだ

執行部席の矢吹先輩は、ゆっくり席を立った

「何はともあれ、総長と補佐に、この様な対応を招かせたのは、私の力量不足。それしかないです。ここは、一度、責任を取らせてください。たった今、この職、辞退させていただきます。今日はこれで失礼します…」

えっ…?

矢吹先輩、そう言って早々に、会場を出て行ったよ!


...


その次の瞬間、二つの場面が同時に私の目に入った

まず、すごい音がした

”バーン!”

両手のこぶしで机を叩く音だ

「うぉー!なんなんだ、これはよ!」

わー、荒子さんだわ

狂犬さん、ライバルがトンズラで、イラついてるのかしら…

「鷹美ー、待ってよ!」

で、ほぼ同時に湯本先輩の声が上がった

矢吹先輩を追いかけようとして、湯本先輩が思わず席を立ってね

「あっこ、私が行くから…。あなたはここにいなさい!」

OG代表の甲斐由美子先輩が、絶妙のタイミングで湯本先輩を制し、矢吹先輩の後を追った

ふー、”仕掛け人”の私が言うのもなんだけど、すごい展開になってきたわ


...



この場は、かなり混乱、錯綜して、みんな戸惑っている様子だ

「議長、ここで一息ついて、冷静になろうじゃないか」

土佐原先輩が、ここで発言だ

さすが大所帯の南玉連合、さっきのOG代表といい、こういう時、大御所もいい味出すわね…

「土佐原先輩、まず、こんな見苦しいところお見せしちゃって、お詫びします。すんません」

刃根先輩、あなたはどうしてそう律儀なの…

そんで、相川はどうした、相川は!

は…?

私を睨んでるじゃん

凄い眼光で…




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