麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その13
夏美



なによ、これ!

どうしてこんな写真があるのよ、ここに…

私の中で時間が止まった

私は目の前に置かれた写真を、ただ見つめていた

無言で、無心で…

だが、我に返った時、もう頭はパニック状態だった

会場内からは、私に対する糾弾の声がこだましてる

その写真から視線を外し、ゆっくり、びくびくと皆を見回すと、私への冷たい視線が突き刺さってくる

痛い…

チクリ、ブスリと体中のあちこちに刺さる

となりの達美は、この写真をちらっと見ただけで、厳しい表情のままじっと腕組みして動かない

どうしよう…

私の体からは、既に脂汗が湧いてきて、背中はもうびっしょりだ


...



「夏美、いつまで黙ってんのよ!立って説明しなさいよ!なんで、その人と会ってたのか、何を話したのか。さあ!」

私は必死で頭を整理した

ここでは絶対、辞任はできない

何がなんでも今日は、態度保留で持ち越すんだ!

でも、この写真の事実を認めないで済む訳がないだろう

どうする?

南部さんとのこと、ここであからさまにするしかないのか…

それとも、会ってる事実だけを告げるか…

いや、そうなれば、南玉と墨東の幹部同士の内通になっちゃうよ

南部さんの顔にも泥を塗って、迷惑をかけちゃうわ

そんなのダメ、無理だよ

しっかりしろ!

ここで挫けたら、ずっと後悔するんだ


...


私はふと、本郷麻衣に視線を向けた

アイツ、笑ってる…

くそー、あの1年だけには負けたくない

私の心はその瞬間、決した




< 13 / 44 >

この作品をシェア

pagetop