麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その15
夏美



「そこでだ。年長者の老婆心ってことで、オレの質問に答える形で、みんなの前で説明してもらおうと思う。いいか、相川補佐」

「はい。よろしくお願いします」

あっこと土佐原先輩に助けられたわ

よし、すでに決心はついてるんだし、ここで話すしかない


...



「まず、この写真は一昨日、墨東の南部聖一と二人で会った時のもの。これは間違いないんだね?」

「間違いありません」

「南部はすでに引退を表明してると聞いているし、もともと反排赤の立場をとってきた人物だ。しかし、名目は敵対勢力下の主要メンバーとなる。高原亜咲が襲われた二日後に会ったとすれば、組織のナンバー2として、疑念が持たれるのは当然だ。だが、もし、二人が個人的に男女として付き合っていたなら、互いの立場はまた別問題となる」

土佐原先輩は私の目を見ながら、優しい口調でゆっくりと話してくれてる

「それで、聞こう。プライペートにまで入り込むのは本意ではないが、どうなんだ?南部と君は個人的に交際してるということなのか?」

「…。はい、私たちは付き合っています」

ついに言ってしまった…

しかも公式の幹部会の席で、大勢のメンバーを前にして

さすがに、みんなざわついてる…

「そうか…。よく言ってくれた。ならばだ、年頃の男女が交際相手と会ってる会話の中身まで、問いただすのは避けるべきだと思うが、どうかな、みんなは…」

「その通り!相川補佐が潔く交際を認めたんですから、これ以上の尋問じみた追及はよすべきです」

あっこがそう言うと、今度はいづみが反論の声を挙げた

「いや、亜咲先輩が襲われた数日後に会ったとすれば、百歩譲っても、南玉幹部の立場として、その会話の内容はみんなの前ではっきりさせる義務があるわ!」

「いづみの言う通りね。それに二人がもし、以前から付き合っていたんなら、互いの組織に内通していた疑念も生じるわ。これは補佐という立場では、致命的に軽率よ。責任問題だわ」

真澄の発言を受けて、土佐原先輩は再び私の顔に視線を向けて言った

「相川補佐にはもう一つ聞こう。二人はいつからなんだい?それで、今まで会った際、互いの組織にマイナスとなるような、まあ重要な内部情報とかを漏らしたとかはあったのかな?」

「付き合い始めたのは昨年の暮れです。でも、二人は互いに組織の幹部という立場を自覚して、互いの組織のことについては、ほとんど口にしないよう、心がけてきました」

私はありのまま答えた

みんながどこまで信じてくれるかはわからないが、これが精いっぱいだ…





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