麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その1
麻衣
幹部会を終え、部屋に戻って間もなくすると、真樹子さんから電話が入った
「今日はお疲れ様。概ね、”絵図”通り運んだそうね」
「ええ。ただ、執行部を即辞任に追い込めなかったわ。相川にしても、止めを刺すまでには至らなかったし…」
「でも、あなたが”折衝”の窓口になるのが、この計画の最重要要件だった訳だから、とりあえずは上々じゃないの?」
「そうですね。フフ…、真樹子さんの取り込みもさすがでしたよ。木戸先輩は気合い入っていたわ」
「そうらしいね(笑)。麻衣さんは、これから剣崎さんと会うんだったっけ?」
「ええ、ヒールズで。砂ちゃんも来てるはずなんで、”シナリオ”の結論は実際には今日決まるわ」
「ウフフ…。見ものね、これからが。で、明日、北田の聴取なんでしょ?そっちの方は大丈夫?」
「久美にはしっかりレクチャーしといたから。まあ、私もつきっきりなんで、ボロは出ないと思うわ。明日は予定通り、夜会いましょう。祥子も呼んであるし。それと、念のため、紅組内の様子も探りをお願いします」
「了解しましたよ、麻衣さん。明日、報告できるように動くよ。ああ、そうそう…。今日、先輩から頼まてれた、例の黒沼高の子達と会ったんだわ。これがさ、なかなか面白いネタになりそうだから、会った時話しますよ。楽しみにしといて」
うふふ…、真樹子さん、またおみやげ話を仕込んできたみたいだ
明日、しっぐり聞くとしよう
私たちは10分程度で電話を切った
...
とにかく今日は”いろんな”意味で、実りのある日だったな…
何と言っても墨東サイドとの”折衝権”を、手に入れたのが大きいわ
真樹子さんが言った通り、この計画完遂には、”これ”が必須だったから…
所詮、”自作自演”の最後の”仕込み”にすぎないんだけどね(笑)
それにしても、この決定を聞いた時の相川の顔、傑作だったわ
おそらく、今日は悔しくて眠れないんじゃないのか、あの女
ハッハッハ…、ざまあみろ!
...
一方、あの場で相川を完全に潰せなかったのは、私の読みの甘さだったわ
湯本先輩らの”味方”連中が、相川を最後まで見切らなかったのは、ちょっと意外だった
それに、OB、OGの重鎮に至っては、見事な制御装置の機能を果たしていたし…
予想以上にフェアなスタンスで、すごい存在感だったわ
もっとも、湯本さんらの今日の行動は、相川さんへの忠誠心だけではないだろうよ
むしろ、荒子体制への警戒心が原動力になっていたんじゃないかな
OBやOGの人たちだって、要は南玉を何としても守りたいという、防衛意識が働いてのものさ
だから戦争回避のため、新入りの私なんかの申し出も、すんなり許容したんだろう
ある意味、この時点で南玉の実態を見切れたのは、今後を考えれば収穫だった
...
明後日、二人の辞任が決定すれば、私が砂ちゃんと”折衝”できることになる
最も、その時には砂垣謝罪は、すでに決定してるんだけどね…
まだ油断はできないが、この計画も最終局面だ…
やってやる…
私はヒールズに向かうため、バイクを飛ばした