麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その5
砂垣



勘弁してくれよ…

剣崎さんだけでいいじゃねえか

なんで倉橋さんが俺の隣にいるんだよ!

しかも酔っぱらって、目がイッちゃってるって

俺はやくざもんじゃねーっての!

麻衣のヤロウ、面白がって薄笑い浮かべてるわ

つくづく小憎らしい娘だ、こいつ…


...



麻衣は例によって、上から目線で俺を追い詰めてくる

まあ、大体の筋書きは聞いていたが、肝心の”見返り”はどうなってんだ?

こっちは見栄も体裁もかなぐり捨てて、大きな犠牲を払ってるんだ

ここで俺たちのメリットを確約とれないんなら、突っぱねなきゃ

「あのう、これはどなたにお聞きすればいいんだか…」

「砂垣!テメー、ミミズの屁みたいな声で囁いてんじゃねえよ。このハンパ野郎が、飲め、こらっ!」

このイカレた酔っぱらい、何とかしてくれって!

口を開く度、ど突かれたんじゃ身が持たねえよ、ホント…


...



「あのねー!今回の件は私が当事者なのよ。グチャグチャ前置きはいいから、はっきり私に聞けばいいのよ。まったく、学習能力足りない人ね、あなた!」

はー?

このガキ、いずれ殺ってやる…

「ああ、その目、いやだわ。倉橋さん、まだお酒足りないようよ。グビグビ、流し込んじゃってよ、しゃらくさいから!」

いい加減にしてくれよ、おい!

「ヒヒヒ…、砂垣、そういうことだ。まずはたっぷり水分補給しろ。遠慮はいらねえから…」

わー、この撲殺男、俺の体にぴったりくっついてるじゃん…

殺されるよ、助けてくれー!

「倉橋、まあ、ちょっと待て。話が先だ」

「うっ…、それじゃあ…」

はあー、助かった

剣崎さんの一言で、倉橋さん、急におとなしくなったよ

「さあ、今のうちだぞ。言いてえことあんなら、手早く話せや」

今度は勝田さんが、薄ら笑い浮かべてこう言った

ああ、言われなくても今言うさ





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