麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その6
砂垣



「あのう…。この条件に全部ハイといったら、ウチら、骨折り損のくたびれ儲けで、ただ働きになっちゃいますよ。当初、お話ししたそれなりの”対価”をはっきり示してもらわないと…」

すかさず麻衣が口を開いたわ

「そうね。うっかりしてたわ。ごめんなさいね。今回、あなたには、愚連隊の勢力圏、全エリアを任せるわ。墨東へもカムバックできるレールは保証する。最も、これまで通り、こっちの”指示通り”に動いてもらうことは”継続”よ」

「えっ?それって、愚連隊の全権、俺が預かれるってことっすか?本当に大丈夫なんですか、剣崎さん?」

「どうやら、学習能力は本当にゼロのようだな、お前。先ほど、麻衣さんは自分が当事者だと告げた。当事者の発した言葉に、本人目の前にして、裏とりはなあ…。ちょっと失礼じゃねえか…」

「ああ、わかりました。了解です。あの、その条件なら、言うことないです。すべて承知しましたんで、よろしく頼みますよ、愚連隊の件…」

「これで合意成立ね。言っとくけど、言葉には責任もって。私は年下の未成年でも、やることは地獄の閻魔様以上だからね。あしからず…」

この女、何様だ

会う度に態度が増長してきてるよ

まあ、条件は悪くない

星流会にも対等張れるし、損得勘定は合うってもんだ


...



だが、その後、付帯条件が出た

「あのね、あなたが今回の責任を負って、墨東会から愚連隊勢力圏に舞い戻る際の人事配置、言っとくわ」

これには参った

まず、赤隊は俺に嫌気がさして麻衣の元へ参陣、南部を引退前の引責除名、高本は墨東のトップとして、今回の責任を取って謹慎

しかもだ、積田を臨時最高責任者にだと!

ここまで露骨な内政干渉をしてくるのかよ…

「いくらなんでも、明日中にこの人事ってのは滅茶苦茶ですよ。正直、まとめられません。もう少し時間を…」

そう言うが早いか、鬼の形相で麻衣が怒鳴ってきた

「ふざけんじゃんねっての!”これまで通り、こっちの指示通り”にって日本語、百偏唱えてろって!」

しまった…、そういうことかよ!

俺の退陣前の人事まで、あからさまなコントロールを要求とは…

クソッ!


...


この人事では、南部らのトロイカ体制は、なし崩しにされるだろう

だが、俺から言わせれば、一番打撃を受けるのは、むしろ俺や大場らだ

奴らを隠れ蓑に、表舞台に立たなくとも影響力を駆使できたんだ

どうやら麻衣は、ガキの勢力図から俺を消し去るつもりらしい




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