麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その8
夏美
”ポーン!”
隣りの達美が、両手を勢いよく叩いた
どうやら、彼女も”思い出した”ようだ
「そう言えば、夏美に聞いたな、この前。あの1年っ子、小学生の時、紅子さんとひったくり捕まえたって。そんで、新聞にも載った仲だとか…」
紅子さんは、ニッコリ笑ってから言ったわ
「あの子とはそれ以来、ずっとなんだ。いい子だよ、ホント。心底気に入ってる。だから、いろんな背景は別にして、今回の件は、単純に怒り心頭なんだ。陸上部であんなに健気に頑張ってたのにケガさせやがって…。あの子は関係ないだろうが!許せないさ、それだけでな…」
全く同感だよ
実は紅子さん、ケイコの気骨を見込んで、南玉連合に入れるイメージも持ってたみたいなんだ
これからの南玉連合には、いや、都県境には、ああいうピュアでフェアなスタンスの人間が必要だと…
実際、ケイコの南玉入り待望論は、主だったメンバーが口をそろえている現状もある
その矢先、こういったアクシデントが起こった…
何とも因果なものを感じるわ
...
「いいかい、お二人。この後、ケイちゃんの見舞いで病院へ行くが、あの子にはすべてを告げるつもりだ。実質的には、ケイちゃんを巻き込んでるんだ、すでにな。ショックを受けるだろうが、本郷麻衣の実際のところも、話さない訳にはいかないだろう…。あくまで推測の域だけどということでね。その上で、私のアクションの了解を得るつもりだ」
何ということだよ!
本郷麻衣が憧憬している亜咲を、ケイコもまた、実の姉のように慕っている
なにしろ、幼いころから、家が隣同士だったんだ
だからケイコは、南玉を家庭の事情で脱退し、高校も中退した亜咲の心情を、誰よりも知っているはずだよ
それ故、亜咲が一時的とはいえ、南玉に復帰したことを、ケイコは我がことのように喜んでいた
そのきっかけを作った、亜咲を敬愛している本郷麻衣が、なんと亜咲襲撃の黒幕だったと…
そんな残酷なことを、あの子に告げなくてはならないなんて…
ケイコのことだ…、麻衣のことは、決して許さないだろう
あの子には部の上級生として、夏の大会に専念させてやりたかったんだけど…
もう、あの子を渦中に引き込んでしまったのか…
夏美
”ポーン!”
隣りの達美が、両手を勢いよく叩いた
どうやら、彼女も”思い出した”ようだ
「そう言えば、夏美に聞いたな、この前。あの1年っ子、小学生の時、紅子さんとひったくり捕まえたって。そんで、新聞にも載った仲だとか…」
紅子さんは、ニッコリ笑ってから言ったわ
「あの子とはそれ以来、ずっとなんだ。いい子だよ、ホント。心底気に入ってる。だから、いろんな背景は別にして、今回の件は、単純に怒り心頭なんだ。陸上部であんなに健気に頑張ってたのにケガさせやがって…。あの子は関係ないだろうが!許せないさ、それだけでな…」
全く同感だよ
実は紅子さん、ケイコの気骨を見込んで、南玉連合に入れるイメージも持ってたみたいなんだ
これからの南玉連合には、いや、都県境には、ああいうピュアでフェアなスタンスの人間が必要だと…
実際、ケイコの南玉入り待望論は、主だったメンバーが口をそろえている現状もある
その矢先、こういったアクシデントが起こった…
何とも因果なものを感じるわ
...
「いいかい、お二人。この後、ケイちゃんの見舞いで病院へ行くが、あの子にはすべてを告げるつもりだ。実質的には、ケイちゃんを巻き込んでるんだ、すでにな。ショックを受けるだろうが、本郷麻衣の実際のところも、話さない訳にはいかないだろう…。あくまで推測の域だけどということでね。その上で、私のアクションの了解を得るつもりだ」
何ということだよ!
本郷麻衣が憧憬している亜咲を、ケイコもまた、実の姉のように慕っている
なにしろ、幼いころから、家が隣同士だったんだ
だからケイコは、南玉を家庭の事情で脱退し、高校も中退した亜咲の心情を、誰よりも知っているはずだよ
それ故、亜咲が一時的とはいえ、南玉に復帰したことを、ケイコは我がことのように喜んでいた
そのきっかけを作った、亜咲を敬愛している本郷麻衣が、なんと亜咲襲撃の黒幕だったと…
そんな残酷なことを、あの子に告げなくてはならないなんて…
ケイコのことだ…、麻衣のことは、決して許さないだろう
あの子には部の上級生として、夏の大会に専念させてやりたかったんだけど…
もう、あの子を渦中に引き込んでしまったのか…