麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その3
夏美



昨日は、やはり熟睡できなかった

「夏美、なんか寝不足みたいね。大学受験まではまだ時間があるんだから、今からあんまり無理しちゃダメよ。あなた、頑張り屋だから。お父さんも心配してるわよ。どう?朝食食べられる?」

お母さん、ゴメン…

違うんだよ、眠れない理由…

「うん。ちょっと、今日は食べられないかな…」

「そう。じゃあ、お味噌汁だけでも飲んで行きなさい。ねえ…」

「うん…」

とは言ったものの、出されたそれは、ほとんど豚汁に近かった


...



鷹美からは、昨夜遅くに電話がかかってきた

彼女、はっきり言っていたわ

「なぜ、私に話してくれなかったって気持ちはありますから。遺憾です」

私はあえて、言い分けじみたことは言わなかった

「ミキさんへの顔つなぎまでしたこの時点で、達美と私だけで止めておいたのは後悔してる。私の判断が間違っていたわ」

私は率直に話した

鷹美はしばらく間をおいてから、きっぱりと言ったわ

「明日の幹部会では、自分でもよく考えて、”対応”させていただきます」

彼女、どうやら真澄あたりとは、昨夜会ってきたようだった

急進派の真澄が、この状況で鷹美に何を説いたかははっきりしてる

だとすれば、今日の会議、だいたいの展開は想像つくわ

それにしても、鷹美に伏せといたのはまずかったわ

ここまで動きが急展開するとは、思ってもなかったから

判断が甘かったわ


...



朝、いつもの時間に家を出て、バス停でバスを待っていた時だった

「夏美…」

声の主は南部さんだった

「南部さん…!どうしたの?」

「ああ、おはよう。ミキさんから昨夜、連絡あってさ…。お前のこと聞いて…、心配になってさ」

ということは、昨日あからさまになった”一連”の件は承知ってことか…

「そうか…。ああ、おはよう。心配かけてすいません。事情は聞いてると思うけど、かなり切迫した状況ですよ。正直、参ってます」

南部さんとミキさんは、どうやら今回の”仕掛け”は砂垣さんの頭越しではないかという見解で一致したという

「今日の幹部会、追いつめられることは間違いないだろうが、大丈夫か?」

「はい。今日の集まりでは、何が起こるかわかりませんが、凌ぎますよ。でも、”敵”って一体…」

「…」

南部さんはしばらく沈黙してた




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