麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その4
夏美


翌日…、私は精力的に動いたわ

紅子さんとミキさんの首尾を信じて…

まず学校が淡った後、達美とはランチを共にし、直近情報の交換とこの後の段取りを綿密に打ち合わせしたわ

で、今日の夜私の家に達美を呼んで、紅子さんとミキさんからの連絡を待つことにした

その後、黒沼高に出向き、鷹美と会った

その場には陸上部OBとして、先の駅伝大会をきっかけに実現した、都県各校の合同練習視察という表向きの名目で、岸谷高の陸上部に所属する湯本あっこも呼んでね…

ここで二人とは、対本郷麻衣に関連した率直な話を打ち明け、何とか共通認識を得たわ

さあ…、あとは紅子さんらの”結果”を待つのみだ…


...


「なんだよ、おい。完全に女の子の部屋じゃん、夏美。ハハハ…」

達美はそう言いながら、部屋の中をきょろきょろ見回し、クスクスと笑ってる

「当たり前でしょ。私は恋する乙女よ、これでも…(笑)」

午後7時半過ぎ…、達美が、私の家に到着して、2階の私の部屋に来てもらった

すでに夕方前には、ミキさんから一度連絡があった

どうやら今頃、紅子さんが砂垣さんと会ってるらしい

私の方は、鷹美とあっこには”最低限”の範囲で、本郷麻衣について告げてことを伝えてね…

ミキさんは「大丈夫?」と、ちょっと不安そうだったけど

私がきっぱり「心配ありません」と言い切ったら、電話口で苦笑していたわ、ミキさん

とにかく見えないところで、事態は秒刻みで動いてる…


...


「…夏美、お夕食持ってきたから」

「うん、今テーブル出すわ」

お母さんが私の部屋に夕食を運んでくれたわ

「おばさん、すいません。夏美の勉強の邪魔しちゃった上、ごちそうまで作ってもらっちゃって…」

「いえいえ…、ごちそうってほどのもんじゃないわよ。夏美が一番、お世話になった人ですものね、達美さんは。たいしたもんじゃないけど、遠慮なくどうぞ…」

テーブルには、湯気の立ったビーフシチューが乗っかった

「いやあ、おいしそうだなあ…。お言葉に甘えていただきます。ありがとうございます」

達美はそう言って、母にちょこんと頭を下げている


...


「…なあ、夏美。あの麻衣って子、私はどうしても憎めないんだ。すまん、あんたにはまた、呆れられるだろうけどさ…」

「達美…」

「理解できないんだよ。あの子が、なんで亜咲を襲ったのか。あの時点では、亜咲が脱退することも承知していたし、お母さんの病気のことも当然さ…。南玉に対してなら、他の人間でもよかったんじゃないのか?何も神戸へ引っ越す、お別れ直前の亜咲じゃなくてもいいだろうが…」

食後の達美は、いつになく多弁だった



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