麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その7
麻衣


そのうち、津波祥子が到着した

「お二人さん、”その節”はどうも…。今日は天気いいね…」

玄関に入った巨体の祥子は、そう言ってニヤッと笑った

そうだ…、”あの日”はホント、物凄い雨だったよ

ハハ…、文字通り、雨降って地が固まったわ…、私ら(笑)

「ああ、苦労様。さあ、中へ入って」


...


祥子には、週末の伊豆集会における段取りの他、これからの計画も大まかだが伝えた

「あのさあ…、祥子。メモくらい取った方がいいんじゃないの?」

私はさりげなく注文をつけた

「麻衣さん、祥子は頭に入ってるんだろうさ。なあ、あんた?」

「いや、全然入ってない」

あのなあ…

「はは、別にあんたらをナメてる訳じゃない。結局、私がやるべきことは、腕にものを言わせることだし。遠慮なく暴れるということ。実際、そうだろ?」

「ああ、基本はな。でもな、あんたには追々、それなりの更なる”役”も担ってもらいたいんだ。だから、私のホントの名も告げたし、私がやろうとしてることも話したんだ。期待してるんだよ!今までがこうだったからって、そういう感覚は捨ててほしい…」

「...」

こいつ、ひょっとして怒ったかな?

...


「ははは…。わかったよ、麻衣。私に期待してくれてるんだ。慣れないことでも、努力しないとね。これからは…」

ふう…、わかってくれたか…

今また、あの大雨の日みたいなタイマンは勘弁だしな…、はは…

さあ、週末の伊豆集会は大体、下準備が整ったぞ

あとは”メインキャスト”の欠席者がでなけりゃ、面白いショーが見られる

第2ステップへの初っ端にふさわしい、ハードな”展開”になることだろう


...



「そろそろ、私も失礼するかな…」

祥子が帰った後、今後についての打合せが一段落すると、真樹子さんがそう言って腰をあげた

と、その時、電話のベルが鳴った

「もしもし…」

「麻衣か…」

剣崎さんだ

ちょっと声のトーンがいつもと違う…

「局面が変わった。今から、レオに来れるか?」

「何かあったんですか?剣崎さん…」

私は、思わず尋ねずにはいられなかった

「話は会ってからだ、麻衣。待ってるぞ」

ガシャン!

電話口の様子からすると、ただ事ではなさそうだ

いずれにせよ、今回の件だということは間違いない


...


私はヘルメットを手にして、支度をした

「麻衣さん…。何かあったようね。どこ行くの?」

「剣崎さんから呼び出しよ。急変でしょうね、きっと。今から会ってくるわ」

「あのさ…、私も一緒に行っていいかな?外で待ってるからさ、私は。話が終わるまで。その結果で、すぐ動くことになりそうだしね…」

「そうね。真樹子さん、じゃあ、頼むわ。急ごう!」

私は真樹子さんを乗せ、バイクをぶっ飛ばした

一路、喫茶レオに向かって…





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