麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その4
夏美



南部さんは、バスに一緒に乗ってくれた

私たちは一番後ろの席に座り、わずかな時間、”打合せ”をした

おそらく傍から見れば、なに朝から神妙な顔してんだろう、あの二人って…

別れ話でもしてるのかって、思われてたかもしれない

はあ…

周りの女子高生たちは、はしゃぎながら昨日のテレビドラマの話をしてると言うのに


...


「じゃあ、ここで降りるわ。夕方ミキさんたちと会った後、連絡くれ。負けんな、夏美」

「はい。朝早く、ありがとう、南部さん…」

南部さんは私の大好きな笑顔を浮かべてから、バスを降りた

紅組と南部さんの見立て通りだとしたら、これは南玉連合に対してのクーデターだ

あの1年、注意は必要だと思っていたけど…

既に水面下で蠢いていたということなのか

とにかく、今日の幹部会では”何らか”がわかるだろう


...



私はいろいろ思案した結果、幹部会前に達美と落ち合う公園には、湯本敦子も同席させた

あっこは、私ら現執行部サイドに理解を示している常任幹部だ

2年のあっこは、次期総長に内定している荒子のイケイケぶりには、従来から警戒の姿勢をとっている

私と達美は、あっこに今までの経緯を大ざっぱに告げた

「会議直前で悪いわね。あなたには、やっぱり言っといた方がってね…」

あっこも昨日の襲撃犯の件は知っていた

「まあ、今日は間違いなく大荒れになる。ただ、どんな状況になっても、ウチらは今日は結論を出さず、態度を保留するつもりだ。その辺含んどいてくれ、あっこ」

ベンチに腰かけて、腕組みしている達美がそう言った

「わかりました。鷹美には、私からも事前に一言かけときますよ」

あっこは急進派の真澄やいづみを、極端に嫌っている

あまりこういうのは好ましくないが、この際、彼女の感情を当て込むのは効果的だ


...


さあ、いよいよ南玉連合幹部会の時間が近づいた

本当の”敵”を見定めてやるわ!





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