麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その11
麻衣


「剣崎さん、砂垣の方はどうなんです?こっちの約束、遂行できるんでしょうね?」

「麻衣、そこの”要請”ってのが、砂垣の謝罪が目的なんだよ」

「なんですって?それじゃあ、私が砂垣から取り付ける確約は、どうなるんです?」

「それは、相和会会長が紅丸有紀に譲った。すでに砂垣は、今日のうちに書面にして、明日、横田競子あてに謝罪をする。しかも、辣腕弁護士立会いの下でな…」

何ということだ!

「じゃあ、私たちとの約束を果たせなかった砂垣には、しっかりけじめつけるんでしょうね?どうなんです!」

「お前らしくないな。もう、わかってるだろう?会長が”それも”承諾ということだ。それはすなわち、砂垣への約束反故を制裁できないということになる」

ここに至って、すべて理解した

”怪物”紅丸有紀は、死んだふりをしていたんだ…


...



私はうつむいたまま、剣崎さんに言った

「剣崎さん…。会長に伝えて下さい。なんで、そんなに簡単に折れるんですかと。目先の損得であなたは動く人ではないと信じていたのに、失望したと…。ケモノのように生きるのに、そういう妥協は必要なんですかって。はっきり伝えて下さいよ!」

ここまで話すと、心もち、涙目になっていた


...


「…。お前の言葉はそのまま会長に伝えよう。だがな、その丸めて投げつけた会長の手紙のコピー、もう一度よく、目を通しておけ。とにかく、明日の南玉連合の幹部会は、流れに任せるんだ。今は始まったばかりだということ、それはお前が一番承知してるはずだしな。じゃあ、俺は帰るぞ」

剣崎さんはレシートを手にして、店を出て行った

私は、さっきヒステリックに投げつけたあの丸まった紙ぺらを拾い上げた。

そして、剣崎さんの帰った後、何度も読み返した

すると…、”あること”に気づいたんだ






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