麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その5
夏美



今日の主要議題は、荒子次期総長就任の承認と亜咲の脱退報告になっている

”あっち側”が動くのは、これらが承認されてからだろう

既に会場には、出席メンバーの大半が顔を揃えている

亜咲は今日の参加を、自粛の意味で辞退していた

で、レッドドッグスからは、”あの”1年が出席する

本郷麻衣…

初めて会った時から、ただならぬ気を発していた新入生

この子が一体、水面下でどんな行動をしていたのか

なにが目的なのか

幹部会が終われば概ね掴める


...



その麻衣が会場前の廊下に現れた

私と目が合うと、歩きながらこっちに向かって頭を下げて、そのまま室内に入って行った

「あの子、私は好きなんだけどな。まっしぐらって感じで…。亜咲も純でいい子だって言ってたしな」

「達美、私があの子の化けの皮、剥いでやるから。まあ、あんたはそういう気持ちでいいよ。でも、私はそうはいかないんだ」

思えば本郷麻衣と私は、初対面の時、すでにお互い嫌っていたわ

女同士の、何か…、どうしても受け入れない拒絶反応みたいな

あの子、私をターゲットにしてるのかもね

なら、受けて立つわ


...



廊下で達美と一緒にいるところに、鷹美が寄ってきた

「お疲れ様です。今日はよろしくお願いします」

鷹美は私ら二人の前で、いつも通り挨拶してくれた

「鷹美、私からも詫びを言うよ。夏美が一人で決めたことじゃないんだ。あんたには当面、黙ってようって判断はさ」

「はい。先輩たちの気持ちはわかってます。ただ、今日の結果で考えさせてください。お二人の引退後は責任あるんで、私も」

鷹美は律義者だ

ケンカとなるといわゆるキレるタイプだが、普段は上級生に対しては、ほとんど口を挟まない

真澄はそういうところを硬骨に利用して、私らとの板挟みにさせてきたんだ

この子にはある意味、この1年、一番苦労させてきた

それなのに、鷹美には亜咲襲撃の件を話さなかった

全く、補佐失格だ、私…


...



OG、OBの代表も来場されたので、達美と私はざっと現状を伝えておいた

「うん、昨日は驚いたよ。まあ、いい按配に収まるよう、俺達もフォローを心がけるよ」

OB代表の土佐原先輩が、温かい言葉をかけてくれた

この人がいなかったら、女主導の今の南玉連合はあり得なかった

私たちの代で、その先輩たちの苦労を無にすることはできない

踏ん張りどころだわね、ここは…


...


会議は静かにスタートした

まず荒子の次期総長承認は、全会一致で可決した

正式な就任は、私たち執行部の解任と同時という日程も決した

次に亜咲の神戸転居に伴う、脱退届も即、承認された

さあ、来るぞ

矢が飛んでくる、これから





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