麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その7
麻衣



刃根総長は、特段表情も変えず、ここでも平静に答弁した

「執行部では、ドッグスが赤隊を暴行したという件は承知していません。亜咲からも、そういった報告は受けていません。まあ、先程、亜咲は南玉脱退ということになったし、今日はこの場にいないから、確認できないけど…」

「では、今日来てるドッグスの代表に、事実関係をこの場で確認してください」

恵川先輩は矢継ぎ早だ

「よし。じゃあ、ドッグス代表で出席の麻衣、いいか。あんたに聞こう。いづみの質問に答えてくれ。この件、事実なのか否か、どうなんだ?」

刃根総長からの指名で私はその場で立ち、執行部にお辞儀をしてから答えた

「先週の水曜日、K駅近くの喫茶店前で、赤隊の女メンバー1人と揉めごとなったのは事実です。私はその場には居合わせませんでしたが、間違いありません」

「それで、暴行したのか?相手を」

「はい」

「誰だ、やったのは?」

「私と同じ高校の北田久美です」

「おい!なんで、それ、こっちに報告しなかったんだよ?」

ここで、会場内は一斉にざわついてきたわ


...



「はい。久美からは、執行部にはしばらく黙っていてくれと言われてたもんで…。亜咲さんにも脱退の意向を聞いていたので、言ってません。今日の幹部会が終わった後、執行部にお話しするつもりでした。すいませんでした」

はは…、会場内は、もはや騒然となってるわ…

「うーん、とにかく襲撃犯の言ってることは、事実ってことか。北田の件は後刻、協議するとして、いづみ、聞いての通りだった」

恵川先輩は、明らかにワンオクターブあげて、再び発言だ

「こんな重大事、執行部の耳に入っていないこと自体、ゆゆしきことですよ!その辺は別途、しっかり決まりをつけてもらうとしてですよ…、それで、そうなれば亜咲先輩を襲ったのは、その報復ってことで辻褄が合うじゃないですか!」

私は次期総長の合田先輩に目をやった

腕組みをして、凄い形相だ…

破裂寸前の風船みたいな顔だよ、真っ赤でパンパンだし


...


「これ、戦争になりますよ、このままじゃ。亜咲先輩は南玉の象徴的存在です!そんな人をヤラれてこのまま黙ってたら、ウチら南玉連合は地に堕ちます。執行部はどういう見解なんですか?黙認するんですか、このまま…」

「いや、私だって、はらわた煮えくりかえってるさ。亜咲はお母さんの看病で、来週にはこの地を離れるんだ。そんな人間を狙いやがって!…、だがよ、今はまだ確証がとれてる段階ではないんだ。安易には行動できないだろうが」

刃根先輩の凄いところは、こういうところだよ

フン、相川さんも少し見習えっての!

まあ、亜咲さん襲撃の”黒幕”は私だから…

言ってること滅茶苦茶だけどさ、私も





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