麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ
その9
夏美


そんな中、腕組みをした総長の達美が毅然と発言した

「おい、真澄!言いたいことはわかるけど、それ、総長の私に言うべきことだろうが!」

この迫力は、達美にしか出せないものだわ

「ああ、そうだな。じゃあ、達美、あんたが答えてちょうだい。この期に及んで、鷹美に重大な事実を伏せる理由ってあったのか。どうなんだよ!」

真澄もさすがに一歩も引かない

考えてもみれば、私ら、1年の頃からこんな感じだった

全然変わってないんだ、私ら…

紅子さんやミキさんが、南玉連合の覇権主義に危惧を抱くのは、当然だよね…


...



「鷹美には、今日の幹部会の前に話すつもりだった。亜咲襲撃の件は何分、不確定要素が多く、数日は局面を見極めて、そのうえでということにしたんだ。ましてや、部外者の一般生徒が入院したんだ。まずは情報を精査、これを第一と考えたんだよ。夏美の独断じゃない。私もそういう認識で一致してたんだ」

それにしても、達美の真っ向な姿勢には頭が下がる…

今さらながらだが、ホント総長の器だよ、達美は

「よくわかったわ。現総長と補佐は、数日後には後輩に代継ぎすることが確定しているのを承知で、今後、執行部トップを務める鷹美を外した。もし、その間に相手が次の襲撃を行ってたら、執行部幹部の一人が認識してない状況で、迎え撃つのよ!危機管理ゼロじゃない!これは問題だわ、責任をとるべきよ!」

ついに畳みかけてきたわ、真澄のヤツ…

その真澄の発言を捉えて、今度は真澄のちょうど正面に座っていた湯本敦子が挙手した


...



あっこは勢いよく席を立って、早口でまくしたてた

「ちょっと待ってください!真澄先輩、この際だから言わせてもらいますよ。総長と補佐が鷹美へ重要事を伝えることに、今まで慎重だったのは、あなた方が鷹美にプレッシャーをかけてきたからでしょう?」

あっこという女は、こういう場では物おじしない

「もし、鷹美が先輩らからの詰問で、その情報を話した結果、少しでも歪曲されてあらぬ形で漏れれば、組織全体にマイナスを及ぼしかねない。トップ二人は、そういう気づかいからで、鷹美を信頼してないからでは決してないですよ。議長、その辺、鷹美に正直な思い、聞いてください!」

ここで、会場の半数近くから拍手が起こった

真澄といづみは苦虫をかんだ表情をしてる

あっこに、ここまでのパワーがあるなんて…





< 9 / 44 >

この作品をシェア

pagetop