新春 福袋

2023年1月、その俺の小説の書籍化が決まった。


その発売日も決まったある日、出版社の編集担当者から電話があった。



『夏目先生、朗報ですよ!先生のお坊っちゃん探偵の帯、なんとあの人気作家の青川次郎先生が書いて下さる事に決定しました!』


青川が帯を書くと聞いて、俺は遠い昔に青川と交わしたあの約束の事を思い出した。



あいつ、あの約束をまだ覚えてたんだ………



◇◇◇


二人共まだ売れない作家の卵だった俺と青川が、酔っ払ってくすんだ東京の空に向かって交わした約束………


「俺かお前のどちらかが先に売れて人気作家になったら、もう片方の小説の帯を書く事!」


「ああ、それはいいな!」


それが、俺と青川が交わした約束だった。


◇◇◇


青川が俺の本にどんな帯を書いてくれるのか、本当に楽しみだ。


出来れば、それは書店で実際に並んでいる自分の小説を手に取って確認したい。


だから、俺は敢えてその帯の内容について担当者に聞く事はしなかった。


そして、いよいよ『お坊ちゃん探偵』の発売日がやって来た。



.

< 9 / 15 >

この作品をシェア

pagetop