「君と一緒!」〜人形の彼と同棲したら〜
 イチは私に素早く向き直り、抱きしめる。

「…よかった。ミオ、僕は役に立った?」

 イチは微笑んで私に尋ねる。

「え、うん…ありがと…」

 私はまだ恥ずかしさと驚きでドキドキしたまま下を向いていた。

「…わ、私平気だから…ね?イチ…」

「…うん…」

 私に念を押されると、イチは寂しそうに浴室を出ていった。

(イチは人形なんだから、見られるのを気にしなければよかったんだろうけど、見た目は男の子だしなあ…)


 お風呂を上がって部屋に戻ると、イチは座って落ち込んでいた。

「まったく、イチは人形っていうより子犬みたいね。お手伝いは嬉しいんだけど…。スキンシップがそんなに好き?」

「ごめんなさい…。ご主人様は、もっとそばにいさせてくれたんだ…」

 イチは下を向いて落ち込んだままだ。

「もう…仕方ない、ご主人様とお手伝いさんしか接したことないんじゃ…」

「ミオ…」

 イチは遠慮がちに私の膝にすり寄ってきた。

(…違う違う、イチは人間じゃないんだから!照れることないんだからっ…!)

「よ、よ〜しよし…」

 私は内心まだ混乱しながら、すり寄ってきたイチの頭を撫でる。

「嬉しいよ…」

 イチは本当に嬉しそうに笑う。

(まったく私、子犬っぽい人形を手に入れちゃったなぁ…)

 するとイチはいきなり立ち上がり、ガバッと私を抱きしめた。

「ミオ〜!!」

「ひやぁぁ!」

(…っ、犬のぬいぐるみだったら、もっと良かったのかも…)
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