「君と一緒!」〜人形の彼と同棲したら〜
「これなら安心してイチを置いて出かけられそう!」

 私の安心しきった言葉に、イチはすぐさま反応する。

「一人は嫌だよ、ミオがいないと嫌だよ〜」

「学校とかバイトにイチを連れていけないでしょ。イチは留守番出来るんだから留守番!」

 しかしイチも折れない。

「やだよ〜」

「イチはいい子でおるすばんして!」

「ミオ〜…!」

まるで姉と幼い弟のような会話。

「…また頭をなでてハグしてあげるから!」

 私の言葉に、イチは少し考えるような仕草をしてからしぶしぶ頷いた。

「わかったよ〜」

 一通りのやり取りを終えると、私はやっと一息つく。

(弟かペットだと思えば、そのくらいは…。にしても、一人のときよりなんだか楽しい、かも…イチが来てから…)

 私はそのあと、イチが用意してくれた具材でゆっくり夕食を作り、お風呂に入った。


 入浴中、ドアの外からイチが私に言う。

「僕もミオと入りたいよ〜。ダメ?」

「だぁめ!イチがお風呂入るのは、いいことだけどね」

「ミオ〜…」

「甘えた声出してもだめ」


 夜はイチがすり寄って来る。

「ミオ〜、ベッドに僕も入れてよ〜」

「だ、ダメっ!!イチは赤ちゃんじゃないんだからっ…!」

「僕、ミオのこと大好きなんだ。痛いことしないよ〜」

「ダメっっ!自分の子供でもペットでも無いひとは入れられませんっ…!」

「…僕、ミオの“特別”になりたい…」

イチはポツリと呟いた。

「…イチじゃ、なれないよ…。私、好きな人がいるから…」

「ミオ…僕…」

 浴室の外にいるイチの声は悲しげにしぼんでいる。

「ごめんね、イチ…」

 本当にイチに告白されている気分になったけれど、私には好きな人がいる。
 イチにはなんだか申し訳ない気分になった。

 次の日も、相変わらず明るく人懐こいイチだったけれど、夜寝る時イチはやはり悲しそうにしていた。
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