再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
少し離れたところで斗真の小さな声が聞こえた気がした。

「嘘だろ……。先を越されたな」

振り返ると斗真はなんとも言えない表情を浮かべていた。

「さ、4人の卒業祝いをしようぜ。それに京介と亜依のお祝いも!」

太一の掛け声でみんなは頷くと、記念に正門の前で写真を撮るといつものお店に向かった。

「4人とも卒業おめでとう! 乾杯」

グラスを合わせると小気味のいい音が鳴り響く。
珍しくシャンパンをオーダーし、卒業を祝った。

「入学した頃は酒も飲めなかったのに、いつのまにか大人になったよな」

誠一郎の声にみんなが笑う。

「会った日にお好み焼き食べに行ったのがついこの前に感じるよな。まだこのままみんなで学生をしてたいよ」

「そうだよね。私もみんなとまだ学生でいたいな」

未来の声に私も頷いた。

「すぐに追いつくから待ってろよ」

そんなことを言う斗真の声にみんなで頷いた。
私たちの大学は日本各地に系列病院があるからどこになるかはわからない。けれど系列で働いている限り常に接点があるはず。
今までのように顔を合わせる頻度は少なくなってもつながっていられる、はず……。
でもただでさえ礼央も誠一郎も離れてしまった。太一や京介、亜依だってわからない。
斗真は?
斗真だってわからない。今までのように気軽に会えない。話せないかもしれない。
考え始めたら急に頭の中が重くなってしまった。胸の奥も苦しい。
ふと斗真の顔を見ると目が合った。
いつもの優しい顔をした斗真の表情を見た瞬間何故か涙が溢れてきてしまった。

「優里? どうしたの?」

未来が驚いて声をかけてきた。

「ご、ごめん。なんだかこうして飲むのもこれからは少なくなっちゃうんだと思ったらね」

「ダメだって。寂しくなることは言っちゃダメ! これからだって会えるよ」

そう言う未来だって目に涙が溢れていた。
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