再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
25歳の誕生日。

「優里、誕生日おめでとう。今年も一緒に過ごせて嬉しいよ」

2時間遅れて始まった私の誕生日。
この日だけは、と前からふたりでホテルを予約しおしゃれしてレストランで食事をする予定だった。
けれど斗真は緊急のオペに呼び出され、もちろんまだ研修中の彼は即座に応じてオペの介助をしてきた。
そのせいでレストランはキャンセルし、ルームサービスで食事をするが私に不満はない。
斗真がどれだけ大変な仕事をしているのかわかっている私は、誕生日を祝ってくれようとしてくれただけで嬉しかった。

「斗真、ありがとう。私も嬉しい」

「ごめんな。レストランで食べられなくて」

食事に行くつもりで斗真はいつもとは違いスーツを着ている。私も久しぶりにおしゃれしてワンピースを着てきた。普段なら抑え気味のメイクもきちんと施し、彼の隣に並んでも恥ずかしくないよう整えてきた。
けれど、もちろん残念だけど彼と今日こうして過ごせるだけで幸せだった。

「プレゼントだ。今年は本物のリングにしたかったがまだ研修中だからごめん。その代わりにこれを受け取って欲しい」

私の指には去年彼からもらったリングが嵌っている。今年本物がもらえるかも、と思わなかった訳ではない。でも今の状況を考えるとまだ先だと言うこともわかっていた。だから大きなショックはない。
彼に渡された小箱を開けると腕時計が2本入っていた。

「お揃い?」

「あぁ。俺たちの仕事は貴金属付けられないだろ? だからつけられるものって時計だなと。俺はオペに入る時外さないとならないけど、外す時に優里のことを思い浮かべられるしな」

付き合って4年目。いまだに斗真からの言葉に胸の奥が熱くなる。

「私もこれ見るたびに斗真も頑張ってるって思える」

箱から取り出すとお互いにはめてみた。
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