再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています

斗真side

紗良ちゃんに泣かれてしまい驚いた。
俺はその涙に紗良ちゃんから離れがたくなってしまった。
先日会ったのが初めてだったはずなのに、どうしてこんなに優しい気持ちになれるのだろう。
子供の患者さんに感じる気持ちとは違う。
俺の子供かもしれないと思っているからなのだろうか。
それとも優里の子供だからなのだろうか。
この子の成長を俺も見たい。
もしも俺の子供じゃなかったとしても優里と一緒なら育てて行きたいと心から思った。
もう絶対に後悔はしたくない。
久しぶりに触れた優里の手はあの頃と違っていた。ふんわりと柔らかかったはずが、いつのまにか働く母の手に変わっていたことに驚いた。でもこれが彼女がしてきたことの証。ひとりで産み育ててきた彼女の勲章だ。
そんな彼女の手を尊敬する。
そしてそんな手を守ってやりたい。
帰り道、夜空に浮かぶ月を見ながら自分のを見つめた。
医者として多くの命に携わって来た。
けれど一番大切な人を守れなかった。
今度こそこの手で彼女を、そして紗良ちゃんを守りたい。
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