再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
夕飯にチキンのトマト煮込みをメインに済ませるとそろそろ紗良をお風呂に入れ、寝かせる時間になる。
斗真にはそろそろ帰ってもらわないといけない。
先ほど作り置きしたものを小分けにし、斗真に持ち帰ってもらうようにした。こういうことをするのはどうかと思うが、友達なら多く作ったものをお裾分けすることだってあるだろう、と自分の中で言い訳を考えながら保存容器に詰め込んでいった。

「とーま、まだかえっちゃいや」

「え?」

「いっしょにねようよ」

紗良は前回のように斗真が帰るのを感じてぐずり始めた。

「紗良ちゃん、また来るよ」

「やだ」

「今度またお出かけしよう」

斗真が抱っこして紗良と話しているが、彼の胸に顔を埋め、ぐずぐずと泣き始めてしまった。そんな姿に斗真も困っていた。

「紗良ちゃんすぐだよ。またすぐ来るからね」

「とーまといっしょがいい」

紗良の切ない願いに私の胸は苦しくなる。
本能で彼が父親だと感じているのだろうか。あまり執着のない紗良が泣いて困らせるなんて今まで見たことがない。斗真だけ特別だ。
背中をさすりながら何度も、また来るからねと繰り返し話す姿にふたりをはなればなれにさせてるのは私だと罪悪感に苛まれる。

「優里、また来ていい?」

ふと斗真に言われ、私は頷いた。

「紗良ちゃん、また近いうち来るからね」

「いつ?」

「えっと……」

斗真は私の顔を窺うように見てきた。

「金曜なら明けだから……夕方来れる、かな」

私を見ながら話しかけてきた。
金曜はもちろん私は仕事。でも夕方と言ってきたのはそれを踏まえてだろう。
いつもなら家に帰るとお風呂に入れ、ご飯を食べて早く寝かせなければ翌日に響くところだが金曜なら多少融通も利かせられる。

「い、いいけど。私たち18時にならないと帰って来れない」

「いいの?」

とても嬉しそうな斗真の顔にこっちまで表情が緩む。

「紗良ちゃん、5回寝たらまた来るよ。待っててね」

「やったー」

紗良は斗真の胸から顔を上げると涙に濡れていた顔が笑っていた。
ふたりは指切りをするとようやくバイバイと言えた。
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