再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
「紗良ちゃん、元気?」

「とーま」

紗良は斗真の首に手を回すと抱きついていた。
みんなはその姿に呆気に取られていた。
ふたりはこそこそと何か話していると笑いあっており、仲の良さを感じる。

「おい、斗真。すごい懐いてるな」

思わず礼央が話しかけると笑っていた。

「優里の子だからな」

力強い斗真は片手で紗良を抱き、もう片手で私の肩をそっと抱き寄せてきた。
驚いてパッと顔を上げると彼の視線と合ってしまい、気まずくてすぐに視線を落とした。
そのまま紗良はテーブルまで連れて行かれ、私たちはみんな後ろについて行った。

「斗真と紗良ちゃんいい関係なんだね」

こっそり未来に耳元で囁かれ、私は小さく頷いた。
確かに紗良はかなりと言っていいほどに懐いている。
ふたりの姿を見ると親子と見間違われてもおかしくないほどかもしれない。
紗良を椅子に座らせてくれると、私は左隣に座った。紗良を挟んで反対側は斗真の席で驚いた。きっと亜依が変に気を回してくれたのだろう。
斗真がまた紗良の世話をやこうとしていると後ろから声をかけられていた。

「竹中先生、お久しぶりです」

斗真は立ち上がると挨拶を交わしていた。その後から次々に知り合いの医者と思われる人たちが斗真に声をかけてくる。年齢も性別もバラバラ、学会の話や症例の話など話が尽きないようでようやく終わる頃には式が始まろうとしていた。
未来から、斗真は人気のある医者だからこういう機会だと話しかけられるのも仕方ないのよと言われた。
なんだかこうしているといつもの彼とはあまりに違い、今は別の世界の人なんだと感じてしまった。
紗良はいつものように話しかけるが、斗真は合間をぬって話しかけにくる人が絶えず紗良の相手はできない。斗真も紗良の様子が気になるようでチラチラ見ているが何もできずにいた。
紗良は退屈になり、いつのまにか私が話しているので安心したのかグループのみんなの周りをちょろちょろし始めた。
本来の明るさや行動力で気がつけば太一の膝に座っていた。

「可愛いなぁ」

太一に頭を撫でられ、その隣の礼央や誠一郎にもあやされ紗良はとてもご機嫌だった。
医者である斗真以外はみんな声をかけられるのもなく、懐かしい話に花が咲いていた。

「あの頃はみんなでよく食べ歩いたよな。勉強会というのは名前ばかりでその後が楽しみで集まってたようなもんだったよ」

「本当だよね」

「あの頃に戻りたいな」

みんなで頷いてしまう。

「みーちゃんはみんなとなかよしなの?」

「うん。太一も誠一郎も、礼央もみんなママとみーちゃんと仲良しなのよ」

「そっか。なら紗良とも仲良しになれる?」

「もちろん」

「うぅ……可愛すぎるじゃないか」

太一がうめいている。その隣でふたりも何度も頷いていた。

「紗良ちゃん、太一って言える?」

「うん、たいちー」

「礼央は?」

「れおー」

「誠一郎は?」

「せーちろー」

「ダメだ、可愛すぎる」

3人は悶絶しており、その姿に私と未来は笑ってしまった。
言葉があやふやなところもあり、走る姿にしても今が一番可愛い時なのかもしれない。
3人は何度も名前を呼ばせ、世話をしてくれたので紗良は飽きることなく過ごすことができた。
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