再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
その夜、斗真からメッセージが入った。
【少しだけ話せないか?】
未来に話すと紗良を見ていてくれるという。
私もさっき思ったことを斗真と話したいと思った。これ以上拗らすのはもう嫌だ。
今私たちのホテルのロビーにいると言われ、慌てて私は部屋を出た。
スーツを脱ぎ、カジュアルな格好になっている斗真だが、ロビーで注目を浴びているように見えた。結婚式に合わせ髪型をアップにしているせいもあるのかいつもより格好よく見えた。
「ごめんな、大丈夫だったか?」
「うん。未来が紗良と遊んでくれてるの」
「そうか。少し外を歩かないか?」
彼に指さされた方は中庭に続いているようだった。秋の夕暮れは早く、庭園がすでにライトアップされていた。
私たちはしばらく無言で歩いていたが四阿を見つけ、そこに隣り合うように座った。
「あのさ、今日の式よかったな」
「え? あ、うん。すごく良かったね。ふたりとも幸せそうだった。あのふたりが結婚するなんて感慨深いね」
「あぁ」
斗真が振ってきた会話なのに弾まない。彼はいつもと違って表情を固くしていた。
また黙り込んでしまった彼が何を話したかったのかわからない。
どのくらいお互いに膝を見つめていただろうか。
「優里は俺の事どう思う?」
「え?」
「俺、再会してからずっと思ってた。今でも変わらず優里が好きだって。この数ヶ月優里や紗良ちゃんと過ごしてきた。どんな時もふたりが好きだし、心の底から大切だと思った。だからこれからは関係を変えていきたい。今日のふたりのように一緒に幸せになろう」
不意に掴まれた私の両手。
斗真の両手で包み込まれているが少し震えていた。
「斗真?」
「俺はいつ切り出していいのか分からなかった。今のままの関係は心地よくて、いつまでもこのままでいられたらと思っていたんだ。けど、今日紗良ちゃんが俺の元に来てくれなくて、太一達に抱かれてただろ? 俺が守りたいのに他の奴らが出てきたらどうするんだって焦ったんだ」
「そんなこと……」
「いや、俺がふたりを幸せにしたいんだ。もう後悔しないって言っていたのに俺は分かっていなかった。今のままの関係で永遠になんていられない。永遠は誓わなければ永遠ではないんだ」
斗真の手に力が入る。
ぎゅっと握られたその手はとても熱い。
「京介がきちんと一歩踏み出すたびに俺は毎回考えさせられるよ。今回もそう。きちんと優里のことを守れる資格が欲しい。未来までずっと隣にいて欲しいんだ」
「本気なの?」
「もちろんだ」
力強いその言葉にポロリと涙がこぼれ落ちた。
「斗真は今はもう立派なお医者さんでしょ? 今日だって色んな人に声をかけられ、もう私の知ってる斗真じゃないと思ったの。輝いてるって思った。この先斗真が結婚を考えた時、私はまた捨てられるんだと思ったら怖くなって逃げ出したくなった」
「そんなのあるわけない」
「でもね、いくら斗真が大切に思ってると言ってくれても、よりを戻したいわけじゃなく、紗良に対する謝罪なんだとどこかで思ってた。だからもう離れたほうが今後のためにはいいと思ったの」
「優里!」
「ごめん、どうしてもまた斗真と連絡がつかなかったら、とか考えちゃうの。今の斗真は私からものすごく遠い人に感じたの」
斗真は私の手を引き、体を寄せてきた。
ぎゅっと抱きしめられ、手だけでなく体も斗真の温もりを感じる。
「俺のほうこそ気がついたらまた優里がいなくなるんじゃないかって怖くて仕方ないんだ。こんなに好きなのに、大切に思っているのにまた消えられたら今度こそどうしたらいいのかわからない」
「斗真」
「それなのに臆病になってこの一言を言い出せなかった」
少しだけ体が離れると斗真の温もりがなくなり寂しくなった。
「優里。一生大切にする。結婚して欲しい」
周りはもう何も見えない。
目の前の斗真しか見えない。
ずっと前から斗真しか見えていなかった。
「うん……」
やっと出たこの答え。
若い頃の約束とはまた違う、重みのある返事だった。
【少しだけ話せないか?】
未来に話すと紗良を見ていてくれるという。
私もさっき思ったことを斗真と話したいと思った。これ以上拗らすのはもう嫌だ。
今私たちのホテルのロビーにいると言われ、慌てて私は部屋を出た。
スーツを脱ぎ、カジュアルな格好になっている斗真だが、ロビーで注目を浴びているように見えた。結婚式に合わせ髪型をアップにしているせいもあるのかいつもより格好よく見えた。
「ごめんな、大丈夫だったか?」
「うん。未来が紗良と遊んでくれてるの」
「そうか。少し外を歩かないか?」
彼に指さされた方は中庭に続いているようだった。秋の夕暮れは早く、庭園がすでにライトアップされていた。
私たちはしばらく無言で歩いていたが四阿を見つけ、そこに隣り合うように座った。
「あのさ、今日の式よかったな」
「え? あ、うん。すごく良かったね。ふたりとも幸せそうだった。あのふたりが結婚するなんて感慨深いね」
「あぁ」
斗真が振ってきた会話なのに弾まない。彼はいつもと違って表情を固くしていた。
また黙り込んでしまった彼が何を話したかったのかわからない。
どのくらいお互いに膝を見つめていただろうか。
「優里は俺の事どう思う?」
「え?」
「俺、再会してからずっと思ってた。今でも変わらず優里が好きだって。この数ヶ月優里や紗良ちゃんと過ごしてきた。どんな時もふたりが好きだし、心の底から大切だと思った。だからこれからは関係を変えていきたい。今日のふたりのように一緒に幸せになろう」
不意に掴まれた私の両手。
斗真の両手で包み込まれているが少し震えていた。
「斗真?」
「俺はいつ切り出していいのか分からなかった。今のままの関係は心地よくて、いつまでもこのままでいられたらと思っていたんだ。けど、今日紗良ちゃんが俺の元に来てくれなくて、太一達に抱かれてただろ? 俺が守りたいのに他の奴らが出てきたらどうするんだって焦ったんだ」
「そんなこと……」
「いや、俺がふたりを幸せにしたいんだ。もう後悔しないって言っていたのに俺は分かっていなかった。今のままの関係で永遠になんていられない。永遠は誓わなければ永遠ではないんだ」
斗真の手に力が入る。
ぎゅっと握られたその手はとても熱い。
「京介がきちんと一歩踏み出すたびに俺は毎回考えさせられるよ。今回もそう。きちんと優里のことを守れる資格が欲しい。未来までずっと隣にいて欲しいんだ」
「本気なの?」
「もちろんだ」
力強いその言葉にポロリと涙がこぼれ落ちた。
「斗真は今はもう立派なお医者さんでしょ? 今日だって色んな人に声をかけられ、もう私の知ってる斗真じゃないと思ったの。輝いてるって思った。この先斗真が結婚を考えた時、私はまた捨てられるんだと思ったら怖くなって逃げ出したくなった」
「そんなのあるわけない」
「でもね、いくら斗真が大切に思ってると言ってくれても、よりを戻したいわけじゃなく、紗良に対する謝罪なんだとどこかで思ってた。だからもう離れたほうが今後のためにはいいと思ったの」
「優里!」
「ごめん、どうしてもまた斗真と連絡がつかなかったら、とか考えちゃうの。今の斗真は私からものすごく遠い人に感じたの」
斗真は私の手を引き、体を寄せてきた。
ぎゅっと抱きしめられ、手だけでなく体も斗真の温もりを感じる。
「俺のほうこそ気がついたらまた優里がいなくなるんじゃないかって怖くて仕方ないんだ。こんなに好きなのに、大切に思っているのにまた消えられたら今度こそどうしたらいいのかわからない」
「斗真」
「それなのに臆病になってこの一言を言い出せなかった」
少しだけ体が離れると斗真の温もりがなくなり寂しくなった。
「優里。一生大切にする。結婚して欲しい」
周りはもう何も見えない。
目の前の斗真しか見えない。
ずっと前から斗真しか見えていなかった。
「うん……」
やっと出たこの答え。
若い頃の約束とはまた違う、重みのある返事だった。