お守りを君に

彼に恋した日

あれは2年前の正月





初めて巫女として授与所に立った日のこと

だった





私はしっかり練習したのにも関わらず




お守りを袋に入れずに渡そうとしたり




お釣りを間違えたりと




時間を無駄にするようなことばかりしていた





「叶、休憩行って来なさい。初めてだからつ

かれたでしょう?」





「あ…はい」





それをみかねた母さんは私に休憩を言い渡し









あんなに巫女の仕事練習したのに…






…まだ………つかれてないのに…






そう思いながら授与所を出ようとしたとき





「お待たせしました!」





そう言って来客者に声をかける母の姿があっ








……母さんは出来てるのに










休憩と言われたのにも関わらず私は箒を持っ

て掃除をしていた





あんなに失敗してたのに休むなんて嫌だ 






そう思いながら箒で掃除をしていたときだっ







「あれあの子さっきお守り買うところでミス

ってた子だ」





「あれひどかったな」





わたしの失敗を見た人たちが通った





やっぱり結構の人にみられてたのかな…





聞きたくはないけど掃除の間は我慢…





我慢…





「巫女って格好が可愛いから調子乗ってんじ

ゃないの?」





「あーー、ほんとは仕事する気ないってこ

と?」






我慢…





「せっかくの正月つぶれてかわいそうだよな―」






かわいそう?






仕事する気ない?






私は私なりに頑張ってるのに……





『お母さん、私巫女さんになりたい!』





『そうなの?じゃあ一緒に巫女さんになれる

ように練習しましょう』





小さいころから巫女の仕事を見てきて私もこ

んな風になりたいと思っていた





だから母さんとの練習も頑張ったのに…






そう思うと泣きそうになる





っ泣いちゃダメだ





私が出来てないのが悪いんだから……!





そんなとき





「お前らなに言ってんの?」





彼が現れたのだ









「木村!?もう戻ってきたの?」





「……そうだけど。今なに話してたの?」





「な、何でもないよ、信也」





「俺悪口聞くの嫌だって言ってるよね」





必死に二人が話をずらそうとしているのを聞

いていないかのように彼は話を続けた





「失敗は誰にだって付き物だ。そんなことを

言うな」





……っ





何でこの人は知らない人のことなのにこんな

に怒ってくれるんだろう





悪口を聞くのは嫌いと言ってはいたが

とても不思議だった





「ほら、謝りにいくよ」





えっ





「あの~すみません」





「は、はい」






「さっきはこいつらが変なこと言ってすみま

せんでした。ほら、お前らも」





「すみませんでした。さすがに言いすぎまし

た」





「すみませんでした」





「い、いえ。気にしないでください!

私も失敗ばかりしていたのが悪いので!

こちらこそ嫌な思いをさせてしまってすみま

せんでした」





相手が母さんだったらこんな思いをさせなか

ったのにな…





私でなければ文句も言わずに済んだし

もっとこの神社を気に入っていただけたのか

もしれない





「私が気にくわなくてもかまわないのです

が、この神社のことは悪く思わないでいただ

けると嬉しいです」





『は、はい!し、失礼します!』





そう言うと二人は走って行ってしまった






あれ?





私変なこといっちゃったかな?







考えこんでいると隣からため息が聞こえた






「ごめんなさい。さっきの俺の友人なんで

す。」





やっぱりか…





「いいえ。大丈夫です。私が出来なかったの

が悪いので……」





一応お客さんなので私はなるべく笑っていた







……






…つもりだった





「無理に笑わないでください。さっきも言い

ましたけど、失敗は人に付き物ですから」





……っ




何で気づいたんだろう





ほんとに不思議な人だなぁ







でも多分私もおかしい






さっきも聞いた言葉なのにすごく心に残る感

覚がある





「悲しかったら悲しかったで良いんですよ」





そう言うと彼は私の頭をなでた






お客さんの対応のときとは違う緊張があった





「あ、すみません」






「い、いえ」





「ほんとに色々すみませんでした。俺電車が





あるのでそろそろ行きます」





「あ、引き留めてしまってすみません」





「では」





そう言って彼は立ち去ろうとした時





「あ、良い忘れてた。また来ますね」

と言った








満点の笑顔で










キュン


と音を立てて何かが刺激された





彼はもう神社にはいない







でも






心拍数があがって






体が熱くなり







恋をしていることがわかった











何で恋だとわかったのかは今でもよくわから

ないけど小説で恋に落ちた主人公はこのよう

な気分なんだと想像がついたからだとを思う












でも……

ダメだよ

彼はお客さんなんだから……!


でも…また来てくれるかな







確か名前は


木村 信也(きむら しんや)さん

だったよね







「また会いたいな」



そう小さく呟いた









あの後彼は毎年来てくれている


今年は年が同い年であることがわかった


また来年と思うけど…



もう少し会う頻度が高ければなぁ…












恋をしたと自覚してからは会うたびにドキド

キして、もっと一緒にいたいと思ってしまう












神様に祈っても人の心は手に入らない









それだけが悲しい







でも










それでも私は









毎日

神様に願い事をするのです






















―彼と両思いになれますように、と―

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