夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
(仕分け……。してあげた方がいいのかしら……)
 アンナの話を聞く限りだと、シャーリーが休んでいた間、ランスロットの専属事務官は不在であったようだ。となれば、書類を仕分ける者は誰もいなかったに違いない。束のように積み上がっている書類の一部が傾きかけている。
「団長……」
「ああ、シャーリーか。何か不便なことでもあったのか?」
「あ、いえ。違います。あの、ご迷惑でなければ、書類の仕分けをと思ったのですが」
 ぱっとランスロットの顔が輝いた。
「手伝ってくれるのか?」
「それが私の仕事ですから」
「頼む。もう、どれから手をつけたらいいかがわからない状態で困っていた。たまに、ウェスト事務官がやってきて、急ぎの書類だけを持っていくのだが」
「まずは、その机の上にある書類の束を崩していきましょう」
 シャーリーは自分でも不思議なくらい、明るい声を出していた。男性が怖いはずなのに、ランスロットは怖くない。むしろ助けてあげたいと思ってしまう。
「シャーリー。君はその場で待っていろ。今、束の一つをそこに運ぶから」
 ランスロットはソファ席の方に書類の一部を運んできた。彼でさえ、両手で抱えるほどの量だ。
「団長。では私、ここで作業をさせていただきますね」
「頼む」
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