夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

「だから、その半年間。お前はどうやってシャーリーに近づいたんだ？　物理的だけじゃなくて、心理的にもだ」
「シャーリーがここに配属されたときは、彼女の机はそこに置いた」
　そことはランスロットの執務席から少し離れた場所。隣の資料室ではなく、同じ部屋で仕事をしていたのだ。それは一年かけてやり取りをした書類のメッセージによって、心理的な距離が近づいていたからだ。
　始まりはその場所だった。
「だが今は、同じ部屋にいることすらできない」
「だったら、まずは彼女の机がこちらの部屋に戻ってくるような関係になるように努力すべきじゃないのか？」
「努力……。どんな努力だ？」
　ランスロットは眉間に力を込めた。
「それは私が聞きたい。お前はどうやってシャーリーに取り入ったんだ？」
「取り入るとは、人聞きが悪い」
　そう言いながらもランスロットはシャーリーと近づけるようになったきっかけを必死で思い出していた。
　やはり、思い当たることは書類のメモだ。それは今も行っている。何しろ、ランスロットが間違って書類を記載するたびに、彼女は訂正内容を書いてくれる。さらにいつもの一言メッセージも漏れなくついてくる。
　昨日だって、そんなやり取りをしたばかりだ。