夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
きっかけは、コルビー領の不作だろう。領民のために奔走する父親を見て、自分も何かできることをと思い始めた。一定の女性がいれば、不特定多数の男性の前でも会話ができるようになった。
だけど、男性と一対一での会話は難しい。そんなときは必ず弟たちが側にいてくれた。
事務官として働くようになってからも、基本的には事務室にこもりっぱなしで「モグラの女」と呼ばれていたが、それでも王城内は自由に歩くことができるようになった。男性とすれ違うこともできる。ただ、触れ合うことはできない。だから、初めて訪れる場所は、緊張するのだ。男性しかいなかったらどうしようという思いがどこかにあった。
「団長。見た目はあんなだけど、優しいってシャーリーが言っていたのよ」
「うん。優しい」
ランスロットは優しい。記憶を失い、役に立っていないようなシャーリーを屋敷に住まわせ、事務官という仕事まで与えてくれた。衣食住には困らないし、弟たちの学費を稼ぐこともできている。
「団長と話、してないの?」
「仕事の話ならしてる」
「感謝の気持ちを伝える、とか。それだけでもいいんじゃない?」
「感謝の気持ちって。団長から言われることはあるけど」
だけど、男性と一対一での会話は難しい。そんなときは必ず弟たちが側にいてくれた。
事務官として働くようになってからも、基本的には事務室にこもりっぱなしで「モグラの女」と呼ばれていたが、それでも王城内は自由に歩くことができるようになった。男性とすれ違うこともできる。ただ、触れ合うことはできない。だから、初めて訪れる場所は、緊張するのだ。男性しかいなかったらどうしようという思いがどこかにあった。
「団長。見た目はあんなだけど、優しいってシャーリーが言っていたのよ」
「うん。優しい」
ランスロットは優しい。記憶を失い、役に立っていないようなシャーリーを屋敷に住まわせ、事務官という仕事まで与えてくれた。衣食住には困らないし、弟たちの学費を稼ぐこともできている。
「団長と話、してないの?」
「仕事の話ならしてる」
「感謝の気持ちを伝える、とか。それだけでもいいんじゃない?」
「感謝の気持ちって。団長から言われることはあるけど」