夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 シャーリーが屋敷に戻っても、ランスロットは戻ってこない。シャーリーの方が先に帰るからだ。それから二時間経ってから、彼は帰宅する。まるで夕食の時間に間に合わせるかのようにして帰ってくる。
 シャーリーは手にしていたスプーンから顔をあげて、ランスロットをじっと見つめてみた。
 何か言わなければ。そのタイミングを考えていた。
「俺の顔に、何かついているか?」
 だが、先に気づいたのはランスロットだった。
「いえ。何も……」
 いつもであればここで顔を伏せ、食事を再開させることで会話を終わらせる。だが今日は、それでは駄目だと思っていた。
「あの、団長」
「なんだ? やはり、何かついていたか?」
 ランスロットは慌ててナプキンで口を拭う。その様子が、まるで子供のようにも見えて、シャーリーは可愛いと思ってしまった。それもシャーリーの知らぬうちに態度に出ていたのだろう。
「な、なんだ? そんなにおかしいのか?」
「え?」
「いや、シャーリーが笑ったから」
「あ。ごめんなさい」
「いや、そうじゃなくて」
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