夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 ランスロットが『燃える赤獅子』という二つ名で呼ばれているなら、金髪碧眼のジョシュアは『眠れる金獅子』と呼ばれている。
 普段は爽やかな笑みを浮かべているジョシュアであるが、敵と認識した相手には、容赦がないため、『眠れる』と表現されているのだ。
 カツカツと乱暴に足音を立てながら、ランスロットはジョシュアに詰め寄り、彼を見下ろした。
 ジョシュアだって、けして背が低いほうではない。特別高い方ではないけれど、成人した男性の平均よりは少し高い方だ。
 それでもランスロットがジョシュアを見下ろす形になるのは、彼の方が十センチ以上も背が高いためである。
「笑えない冗談はやめてくれ……」
「冗談ではない。今、お前の屋敷から使いが来た。だから代わりに、私が話を聞いておいた」
 どうしてそのような流れになるのか、ランスロットには全くわからない。使いが来たのであり、ましてそのような内容であれば、()()まで案内するのが筋ではないのか、と。
「お前が荒れているから、事務官も怯えてこの部屋に入りたがらない。だから私が間をとりもったのだ」
 ジョシュアの今の話も聞き捨てならない。事務官が入りたがらないとは、一体どのような状況なのか。

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