夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 イルメラはランスロットから頼まれたと言っていたから、彼にこの内容を確認するのは間違いではないだろう。
「ああ、そのことか。悪いが、明日からは俺と一緒に王城へと行ってもらうことになる」
「え? となれば、いつもより早くここを出る必要がありますか?」
「いや。俺が君の時間に合わせる」
「ですが、団長は朝議とかいろいろとご予定があるのでは?」
「それは問題ない」
「ですが……」
 ランスロットの言葉に対して、シャーリーからは「ですが」しか出てこない。なぜランスロットはそこまでしてシャーリーと共にいる必要があるのだろうか。
 それをシャーリーは口にする。
「俺が、君と一緒にいたいからだ。それでは理由にならないか?」
 うまく誤魔化されたような気がした。
 シャーリーは間違いなく変な顔をしていたはずだ。ランスロットの言葉に、どう対応したらいいかがわからず、眉間に皺を寄せ、唇も尖らせていたにちがいない。
 そんな彼女を、ランスロットは目を細めて見つめている。
 だが、彼はいつも真っすぐに気持ちをシャーリーに伝えてくる。
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