夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

　ランスロットの喉元が上下する様子が、はっきりとわかった。
「かまわない」
　シャーリーは立ち上がると、ランスロットの隣に座り直す。
「失礼します」
　そして、彼の左手を両手で握りしめる。
「やっぱり。大丈夫です」
　シャーリーが安心したように微笑めば、ランスロットの口元はふるふると震えている。
「しゃ、シャーリー」
　ランスロットは彼女の手に、さらに自分の右手を重ねた。
「嫌か？」
「嫌ではありません」
「抱きしめてもいいか？」
「それは……。まだ、ちょっと」
「うぐっ……。そうか、だが今は我慢する。こうやって、君が俺に触れてくれるようになっただけでも、俺は嬉しい」
　その言葉は、間違いなく彼の本音なのだろう。どことなく、口の端が緩んでいた。