夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 シャーリーは、ランスロットの専属事務官となっていたが、他の事務官から応援を頼まれれば、断ることなく書類の確認を引き受けていた。主に、会計など数字に関するものが多い。その引き受けた書類のうちの一部が、魔導士団の会計関係の書類だったようだ。
『最近、薬品庫の在庫の数が合っていないんだ』
 そうぼやいたのは、魔導士団の団長を務めているレイモンであった。
『つまり、魔導士団の中で不審な動きがあると?』
 ランスロットが尋ねると『残念ながら』とレイモンは答える。
『シャーリーであったなら、すぐに気づいただろうな。彼女は、数値から不正を判断する能力が長けている』
『だからだろう? シャーリーから記憶を失わせ、事務官としての仕事から遠ざける。そのうちに、魔導士団の薬品庫から、必要な材料を気づかれないように盗み取る』
 ジョシュアの言葉に、誰もが考え込む。
『レイモン。在庫の合わないものが何であるのか、それはわかっているのか? どのくらい盗まれたのかも』
 ジョシュアは睨みつけるように目を細めた。
『いや。種類はなんとなくわかるが量はわからない。種類も全部ではないと思う。というのも、記録簿も改ざんされていた。たまたま、同じ薬草を使おうとした者が、以前に使ったときの残量と違うと言い出したようでな。それで私にまで話があがってきた』
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