夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 自分で書いたものでありながらも、感心してしまう。
 そうやって空いている時間に、机の中の帳面を見直していたら、一番奥に入っていた帳面に気になることが書かれていたのだ。
『魔導士団の薬品庫、在庫確認』
 魔導士団は薬を調合するため、薬品庫を所有している。その薬品庫には、一般的なものから取り扱い注意のものまで、いろんな種類の薬品が保管されている。その薬品も資産であるため、在庫数は定期的に報告書としてあがってくるのだ。
 しかもこの文字が、他のページと同じように記載してあるのではなく、最後の方に大きく走り書きしてあったことが気になった。
(ただのメモ? 後で確認しなければならなかったのかな?)
 資産が適切な環境で保管、管理されているのかを現地で確認する場合もある。ただ『モグラの女』であるシャーリーがその場に立ち会うことはない。
(アンナに相談しようとしていた、とか。あとは、監査室。財務大臣……)
 だが、シャーリーの性格を考えれば、直接監査室や財務大臣に乗り込むことは考えられない。
 だからシャーリーはこの走り書きの件をランスロットに相談したかった。
 それからもう一つ、彼には伝えたいことがあった。
 最近になって気になる視線があるのだ。誰かに後をつけられていうような気がする。屋敷から王城まではランスロットが一緒にいてくれるが、例えば昼、アンナと一緒に食堂に行くときなど、得体の知れない嫌な空気がまとわりついている。
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