夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「くぅっ」
 彼は、シャーリーを力いっぱい抱きしめる。
「すまなかった。君を一人にさせるべきではなかった。悪かった」
「ランスロット様のせいではありません」
 シャーリーは、ゆっくりと彼の背に手を回した。
「シャーリー」
 ランスロットの熱の孕んだ声が、彼女の耳元を撫でていく。
「あっ……」
 シャーリーは、急に頭を彼の胸元に押しつけた。
「おい、シャーリー。どうかしたのか」
「頭が……、痛い」
 ランスロットの背に回していた手を離し、両手で頭を抱え込む。
 彼を抱きしめてほっと一息をついた途端、彼女に襲いかかったのは頭が割れるほどの激しい頭痛だった。
「シャーリー、横になりなさい」
 ランスロットは彼女を抱きしめていた手を緩めると、シャーリーの身体をソファに横たえる。
「今、医師を読んでくる。いや、だめだ。君を一人にはできない」
< 162 / 216 >

この作品をシェア

pagetop