夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 そして今日、晴れ渡る青空の下、ハーデン家の庭で二人の結婚式のやり直しとなった。結婚誓約書は有効となっているため、形だけの結婚式だ。
 しかも面白がって、ジョシュアが司祭役を務めると言い出してきかなかった。ランスロットは頑なにそれを拒んだが、シャーリーが許してしまった。
 シャーリーの父親と弟たちも駆けつけてくれた。
 他にも、アンナもブラムもレイモンもイルメラもセバスもガイルも。皆、二人の結婚を祝福しているのだ。
 さわわと風が吹くと、庭の花はかさりと揺れる。
 ガゼボを祭壇に見立て、二人はジョシュアと向かい合って立っていた。
「ランスロット。あなたはこれからもシャーリーを守り、夫として永遠にシャーリーを愛し続けることを誓いますか?」
「ちょっと待て」
 司祭役のジョシュアの言葉がランスロットは気に食わなかったらしい。
「そんなの、練習にはなかったし、前の結婚式にはなかったはずだ。俺とシャーリーが誓いの言葉を言うんじゃないのか?」
「私もこの言葉を言ってみたかったんだよね。だからランスロットは誓いますとだけ言えばいい」
「なんだ、それは」
 ランスロットの隣からは、くすくすと笑い声が聞こえてくる。
「じゃ、誓わないのか? シャーリーを愛し続けると誓えないのか?」
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